「自分のお店でおすすめのクラフトビールを販売したい」
「飲食店のお客様向けに、料理に合うワインのテイクアウトを始めたい」
「ECサイトで珍しい日本酒を全国の人に届けたい」
このようにお考えの皆様、その素晴らしいビジネスプランを実現するためには、「酒販免許(しゅはんめんきょ)」という国の許可が必要になることをご存知でしょうか?
「お酒を売るのに許可がいるの?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この免許なくお酒を販売してしまうと、厳しい罰則が科せられる可能性もあります。
はじめまして。行政書士事務所ネクストライフ代表の松原です。
これからお酒の販売を始めたいとお考えの皆様に向けて、複雑で分かりにくい酒販免許の手続きを、全5回に分けて、どこよりも分かりやすく解説していきます。
シリーズ第1回目となる今回は、「そもそも酒販免許とは何か?」という基本のキから、免許の種類、取得までの大まかな流れまで、全体像を掴んでいただくための知識をお伝えします。ぜひ最後までお付き合いください。
1. なぜお酒の販売に「酒販免許」が必要なのか?
スーパーやコンビニで当たり前のように売られているお酒ですが、実はその販売は法律によって厳しく管理されています。その根拠となるのが「酒税法」です。
国は、お酒から「酒税」という税金を徴収しています。この酒税を安定的・確実に確保すること、そして、未成年者の飲酒防止といった国民の健康や安全を守る観点から、誰でも自由にお酒を販売できるわけではなく、税務署長の許可を受けた事業者のみが販売できるように定めています。
その許可こそが「酒類販売業免許」、一般的に「酒販免許」と呼ばれるものです。
もし、この免許を持たずに継続的にお酒を販売すると、無免許販売として「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という重い罰則の対象となります。知らなかったでは済まされない、非常に重要なルールなのです。
免許が必要なケース・不要なケース
では、具体的にどのような場合に必要なのかを見ていきましょう。
ポイントは「営利目的で、継続的に」お酒を販売するかどうかです。
免許が必要になる具体例
- 酒屋、スーパー、コンビニなどの小売店でお酒を販売する
- 飲食店が、瓶ビールやボトルワインなど栓の開いていないお酒をテイクアウト・デリバリーで販売する
- インターネット通販(ECサイト)やカタログでお酒を販売する
- イベントやフェスで、継続的にお酒を販売する(※条件によります)
- 自分で輸入した海外のお酒を国内で販売する
免許が不要なケース(例外)
- 自分が飲むためにお酒を購入する(自己消費)
- 友人や知人に無償でプレゼントする
- 会社のパーティーやBBQで、参加者から実費だけを集めてお酒を提供する(利益を得ない)
- 結婚式の引き出物としてお酒を渡す
「フリーマーケットで1回だけなら大丈夫?」といったご質問もよくいただきますが、たとえ1回でも利益を得る目的で不特定多数に販売する場合は、原則として免許が必要です。ご自身のケースがどちらに当てはまるか不安な場合は、必ず専門家にご相談ください。
2.免許の種類をざっくり理解しよう!あなたのビジネスはどれ?
一口に酒販免許と言っても、その種類は多岐にわたります。ここで全てを解説すると混乱してしまいますので、まずは最も基本的な分類をご理解ください。
酒販免許は、「誰に販売するのか?」という視点で、大きく2つに分けられます。
1.小売業免許: 消費者や飲食店にお酒を販売するための免許
2.卸売業免許: 酒造メーカーや他の酒販業者にお酒を販売するための免許
これからご自身でビジネスを始められる方のほとんどは、「1. 小売業免許」の取得を目指すことになります。
さらに、この「小売業免許」も、「どのように販売するのか?」によって、主に以下の2種類に分かれます。
① 一般酒類小売業免許
店舗を構えて、お客様に対面でお酒を販売するための、最もスタンダードな免許です。いわゆる「街の酒屋さん」が持っている免許がこれにあたります。
飲食店がテイクアウト用にお酒を販売する場合も、この免許が必要です。
② 通信販売酒類小売業免許
インターネットのECサイトやカタログなどを利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象にお酒を販売するための免許です。実店舗を持たないネット販売専門のビジネスモデルには必須となります。
ただし、この免許には販売できるお酒に一定の制限があるなど、少し特殊なルールが存在します。これについては、今後の記事で詳しく解説していきます。
まずは、ご自身のビジネスが「店舗で売るのか?」「ネットで売るのか?」を基準に、どちらの免許が必要になるかをイメージしてみてください。
3.免許取得までのロードマップ(流れ・期間・費用)
「自分に必要な免許の種類がなんとなく分かった。では、どうすれば取得できるの?」
ここからは、免許取得までの大まかな道のりをご紹介します。
免許取得までの基本ステップ
- 事前相談: 管轄の税務署に、事業計画などを伝えて相談します。
- 要件確認: 申請者や販売場所が、法律で定められた要件を満たしているか確認します。
- 書類作成: 申請書や事業計画書、店舗の図面など、膨大な量の書類を準備します。
- 申 請: 準備した書類一式を税務署に提出します。
- 審 査: 税務署の担当官が、書類の内容や現地の状況を審査します。(約2ヶ月)
- 免許交付: 審査を無事に通過すれば、免許が付与されます。
どれくらいの期間と費用がかかる?
期間
税務署に申請してから免許が交付されるまでの「標準処理期間」は約2ヶ月と定められています。しかし、これはあくまで審査にかかる期間です。
実際には、その前の事業計画の策定や、膨大な量の書類準備に1~3ヶ月以上かかるケースがほとんどです。そのため、事業を開始したい時期から逆算して、少なくとも4ヶ月~半年前には準備を始めることを強くお勧めします。
費用
免許の交付を受ける際には、「登録免許税」という税金を国に納める必要があります。
- 小売業免許(一般、通販など):1件につき3万円
- 卸売業免許:1件につき9万円
この他に、申請を行政書士などの専門家に依頼する場合は、別途報酬が必要となります。
まとめ:酒販免許は計画的な準備が成功のカギ
今回は、酒販免許の基本的な知識について解説しました。
- お酒を継続的・営利目的に販売するには「酒販免許」が必須
- 無免許販売は厳しい罰則の対象となる
- 免許には「小売」と「卸」があり、さらに販売方法によって種類が分かれる
- 免許取得には約2ヶ月の審査期間と、それ以上の準備期間が必要
「なんだか難しそう…」と感じられたかもしれません。しかし、一つ一つのステップを確実にクリアしていけば、決して取得できない許可ではありません。
成功の鍵は、「事前の情報収集と計画的な準備」に尽きます。
さて、次回は、免許申請の最初の関門となる「【申請前にセルフチェック】酒販免許が取れない?3つの要件(人的・場所的・経営基礎)を徹底解説」と題し、申請の前提となる非常に重要なルールについて深掘りしていきます。
この記事が、あなたの新たなビジネスの第一歩となれば幸いです。
酒販免許のことでお困りなら、まずは専門家にご相談ください。
行政書士事務所ネクストライフでは、お客様のビジネスモデルに最適な免許のご提案から、複雑な書類作成、税務署との折衝まで、免許取得をトータルでサポートいたします。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
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[…] これまで、酒販免許の基本(第1回)、クリアすべき3つの要件(第2回)、そして具体的な申請手続き(第3回)と、免許取得への道のりを、順を追って解説してきました。 […]