飲食店? ネットショップ? あなたの事業に最適な酒販免許取得のコツ

これまで、酒販免許の基本(第1回)、クリアすべき3つの要件(第2回)、そして具体的な申請手続き(第3回)と、免許取得への道のりを、順を追って解説してきました。

基礎知識が身についたところで、今回は「じゃあ、自分のビジネスの場合はどうなの?」という疑問にお答えするケーススタディ編です。

同じ「お酒を売りたい」という目的でも、事業の形態によって取得すべき免許の種類や、特に注意すべきポイントは大きく異なります。今回は特にご相談の多い3つのケースを取り上げ、それぞれの免許取得のコツと注意点を分かりやすく解説していきます。ご自身のビジネスプランと照らし合わせながら、読み進めてみてください。

目次

ケース1:【飲食店向け】テイクアウト・デリバリーでお酒を販売したい!

レストランや居酒屋を経営されている方から、「お店で出しているお酒を、料理と一緒にテイクアウトやデリバリーで販売したい」というご相談が非常に増えています。

どの免許が必要?

この場合に必要なのは「一般酒類小売業免許」です。飲食店営業許可だけでは、栓を開けて店内で提供することはできても、栓の閉まったお酒を物販として販売することはできません 。

最大のハードルは「場所的要件」

飲食店の方がこの免許を取得する際、最も大きなハードルとなるのが「場所的要件」です 。

税務署が作成している「申請の手引」では、「販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていることが必要」と定められています。

簡単に言うと、「飲食スペース」と「お酒の販売スペース」をはっきりと分けなさい、ということです。

OKな例:

  • お店の一角に、背の高い棚やカウンターなどで明確に区切られた「物販コーナー」を設ける。
  • 物販用のレジを別途用意するか、既存のレジでも会計が明確に分けられるようにする。
  • お酒の在庫を、飲食用のものとは別の場所に保管・管理する。

NGな例:

  • 客席のすぐ隣の棚にお酒を並べているだけで、誰でも自由に手に取れてしまう。
  • 飲食代とテイクアウト代の会計を同じレジで区別なく行っている。

以前、コロナ禍の特例措置として「期限付酒類小売業免許」がありましたが、この制度は既に終了しています。今後、恒久的にお酒のテイクアウト販売を行うには、この「一般酒類小売業免許」をきちんと取得し、場所的要件をクリアすることが不可欠です。

ケース2:【ネットショップ・ECサイト向け】 全国にお酒を届けたい!

「こだわりの地酒や、海外から仕入れた珍しいワインを、ECサイトで全国の人に販売したい」という夢をお持ちの方も多いでしょう。

どの免許が必要?

2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象にインターネット等で販売を行う場合には、「通信販売酒類小売業免許」が必要となります。

一般酒類小売業免許では、原則としてその販売場が所在する都道府県内の消費者への通信販売しかできません。全国展開を目指すなら、この免許は必須です。

販売できるお酒に「縛り」がある?

通信販売酒類小売業免許の最も特徴的な点は、販売できるお酒に制限(需給調整要件)があることです。

  • 国産酒の場合:
    前会計年度の品目ごとの課税移出数量が、すべて3,000キロリットル未満である酒類製造者が造ったお酒しか販売できません。これは、小規模で特色ある酒蔵を保護・育成するためのルールです。大手メーカーのビールや日本酒の多くは、この基準を超えるため、通信販売酒類小売業免許では基本的に販売できません

  • 輸入酒の場合:
    この数量制限はありません。そのため、これからネットショップを始める方は、まず輸入酒の販売からスタートするケースが多く見られます。

Webサイトでの表示義務も忘れずに!

免許を取得して販売を開始する際には、Webサイトに以下の点を明記する義務があります。

  • 販売業者名、所在地、販売責任者名などの「特定商取引法に基づく表記」
  • 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨の表示
  • 購入者の年齢確認欄の設置
  • 「酒類販売管理者標識」の掲示(画像データで可)

これらの表示を怠ると指導の対象となりますので、必ずサイト内に分かりやすく表示しましょう。

ケース3:【事業者向け】他の酒屋さんや飲食店に「卸売り」したい!

「自分で輸入したお酒を、小売店や飲食店に卸したい」「地域の酒蔵と提携して、代理店としてお酒を卸したい」といった、事業者向けのビジネスモデルです。

どの免許が必要?

消費者や飲食店に直接販売する「小売」とは異なり、酒類販売業者や酒類製造者に販売する「卸売」を行うには、「酒類卸売業免許」が別途必要です。一般酒類小売業免許や通信販売酒類小売業免許で、他の酒販業者に卸売を行うことはできません。

免許の種類が細かく分かれている

酒類卸売業免許は、取り扱うお酒の種類や販売方法によって、非常に細かく区分されています。

  • 全酒類卸売業免許  : 原則として全ての品目の酒類を卸売できます。
  • ビール卸売業免許  : ビールを卸売できます。
  • 洋酒卸売業免許   : ワインやウイスキーなどの洋酒を卸売できます。
  • 輸出入酒類卸売業免許: 自身で輸出入するお酒を卸売できます。

その他、自己商標酒類卸売業免許、店頭販売酒類卸売業免許など、様々な種類があります。

取得の難易度が高い点に注意

特に「全酒類卸売業免許」と「ビール卸売業免許」は、需給調整のため、都道府県ごとに年間の免許発行可能件数が設定されています。そのため、申請期間(毎年9月1日~30日)が定められており、希望者が多い場合は公開抽選によって審査順位が決定されます。

また、経営基礎要件として、酒類業界での10年以上の業務経験(経営者の場合は5年以上)などが求められるなど、他の免許に比べて格段にハードルが高く設定されています。

【番外編】 自分で作ったお酒は売れるの?

「趣味で作った梅酒や果実酒を販売したい」というご質問もよくいただきますが、これは酒販免許とは全く別の話になるので注意が必要です。

アルコール度数1%以上の飲料を製造することは「酒造り」にあたり、そのためには「酒造免許」という、酒販免許よりもはるかに取得が困難な免許が必要となります。無免許でのお酒の製造は、酒税法で厳しく罰せられます。

飲食店が店内で自家製の梅酒などを提供することは、一定の条件下で例外的に認められていますが、それを瓶詰めしてテイクアウト販売することはできません。安易な考えは非常に危険ですので、必ず専門家にご相談ください。

まとめ:あなたのビジネスに最適な免許取得を

今回は、具体的な3つのケース+番外編で、免許取得のポイントを解説しました。

  • 飲食店      →  一般酒類小売業免許。   場所の区画が最重要。
  • ネットショップ  →  通信販売酒類小売業免許。 販売できるお酒の制限Webサイトの表示義務に注意。
  • 卸売業      →  酒類卸売業免許。     種類が多様で、取得の難易度が高いものもある。

このように、業態によって押さえるべきポイントは全く異なります。ご自身のビジネスプランを成功に導くためには、まず最適な免許を選択し、その要件を一つずつクリアしていく計画的な準備が不可欠です。

「自分の場合はどの免許だろう?」「この店舗レイアウトで大丈夫かな?」など、具体的なお悩みやご不安がございましたら、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。お客様の状況を丁寧にお伺いし、免許取得への最短ルートをご提案させていただきます。

043-483-8911(9時~22時 土日祝日OK)
info@nextlife-office.com(24時間OK)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

行政書士事務所ネクストライフの代表・行政書士の松原輝(マツバラアキラ)です。各種営業許可、外国人ビザ、補助金・融資、相続・遺言はお任せください。

コメント

コメントする

目次